Mission Company

『or』で考えない 『and』で考える株式会社ヨコレイ 代表取締役 有井 清の生き方・働き方

なんのためにやるのか?を考え、AorBではなく、すべてを大切にする

“すぐに”“きちんと”を当たり前に従来の設備会社には無かったサービスを提供しよう

ヨコレイ本社当社は、建設業の中の設備工事を請け負う会社で、設備の施工管理・設計・サービスメンテナンスを提供しています。主に空調・換気、給排水・衛生、消火設備を取り扱っており、その他には太陽光発電システムや省エネ設備も手掛けています。

創業は、1966年(昭和41)4月5日。私の父が創業者です。立ち上げた会社は「横浜冷暖房設備株式会社」といい、ナショナル(松下電器)の修理の代行店からスタートしました。

代行店というのは、ユーザーさんがメーカーに「給湯器が壊れた」とか、「エアコンが壊れた」と修理の依頼を電話ですると、メーカーから地域の代行店に指示がくだり、私どもが「ナショナルでーす!」と、ユーザーさんを訪問します。ナショナルのマークの入ったユニフォームを身に付け、ナショナルカラーの車で修理に伺う…これが代行店業務です。
このナショナルのサービス代行店が当社のスタートですが、そのうちにお客様の方から「壊れたらどうせまたあなたのところで直してもらうのだから、交換もあなたのところでやってよ」という要望をいただくようになり、修理のかたわら、自分たちで設置工事もするようになりました。

作業風景

その後、次第に設置工事の仕事が増えてきまして、やがて、自ら施工はせず、私たちは施工管理を行い、現場での設置作業は専門工事会社にお任せするという形にシフトしました。つまり、一時、自社施工という形をとりましたけれど、それ以降は現在のように施工管理がメインになりました。

ただ、事業のスタートがサービスメンテナンスなので、ここだけは、ずっと大事に残しています。やはり、私たちはお客様とメンテナンスを通して日頃から繋がっていたいと強く思っておりますし、他社さんとの差別化はサービスメンテナンスにあり、という認識が根底にありまして、現在も様々な独自の取り組みをしているところです。

例えば、サービスメンテナンスでは何と言っても「スピード」を大事にしています。とにかくスピードで負けちゃいけない!ということで、お客様から修理のご依頼をいただいた当日の訪問率、これを100%にすることを目指して頑張っています。5年ほど前から目標に設定し、おかげさまで、開始して2年を過ぎたあたりから100%になったんですよ。

作業風景

「スピード」を目標に掲げたのは、資金力や総合的な技術力では、やはり大手さんには勝てない面があり、会社の規模に関係なく確実に大手に勝てて、なおかつ、お客様に喜ばれることは何か、その道を探ると、やっぱり「すぐに」「きちんと」だと考えたからです。

その「すぐに」の部分の具体的な行動が「とにかく当日訪問をやろうよ」というわけです。嬉しいことに、今のメンバーはそれが「当たり前」のような形になっています。

それと「スピード」でもう一つ取り組んでいるのが、お客様から修理のご依頼をいただいてから24時間以内に機能を回復させるということです。おかげさまで、現在、空調設備では回復率97%、衛生設備では99.5%にまでなりました。

完全に修理が完了してはいないけど、とりあえずお使いいただける状態にするということ。エアコンであればとりあえず冷房・暖房が効く、給排水であれば水道のジャジャ漏れを止めたり、排水であれば詰まった物を除去して流れるようにしたり…それを機能の回復ということでカウントしております。

配線作業

初めは修理のご依頼に対応していただけなのですが、ある時から、例えばトイレ周りで頻繁に壊れる部品というのはある程度経験で分かってきましたので、そういった部品を常に在庫としてサービスカーに積むようにしました。

また、空調の修理の場合は、どうしても部品交換が必要になることが多いです。例えばプリント基板などですね。全ての機種のプリント基板を用意しておくことはできませんが、お客様にお許しをいただければ、メーカーのサービスセンターに部品を取りに行ってその日の内に直す。こんなことに取り組んでいます。

 

一人ひとりの心 『マインド』が大切「当たり前」の徹底が、お客様 社員 関わる全ての人から『選んで頂ける会社』になる

私たちのような30人規模の設備工事会社は、世の中にごまんとあります。県内・市内でも競合する会社はたくさんあります。年に一回、業界新聞にそれぞれの会社の完工高などの情報が掲載されますが、私たちは神奈川県で30番から50番目の間にランクされるくらいの会社です。

そんな規模の会社が、どうやったらお客様に選んでいただけるか。また、お客様だけじゃなくて、リクルートの問題、会社は人が働いてくれないと何もできませんから採用は重要な課題ですよね。ですから、どうやったら就職先として選んでもらえるのか。

さらに、今働いてくれている社員のみんなにもこの先も永く働いてもらいたい…そうした観点から、わが社は何に特化していくか、どこを差別化のポイントとしてやっていけばいいのかを、考えました。

仕事風景

受注に際して、大手さんと競うこともあるわけで、そういった時、我々の勝機はどこにあるのか…そんな事を考えておりました際、「対応の早さというのは、会社の規模には関係なく、メンバーひとり一人の心、『マインド』の在り方によるものだ」というように捉えたんです。

お客様が「なんとかしてくれないかな」と困っていらっしゃる時に「なんとかしましょう!今日伺います!」と応じる、これは「お客様を我々がどう思っているかだよね」ということ。

私たちは、お客様がお休みの時に仕事をさせていただくことが結構多いんです。つまり、社員は、土・日・祝日、あるいはGWやお盆といった連休に仕事をしなければなりません。当社の場合、昔から「そんなことは当たり前だよ」と、それをいとわない気風があります。他の会社ではともすると「その日は休みなんですよ」と言って対応を断るケースもあるようですが、当社ではお客様が指定された日にやるのが「当たり前」。当然のごとく、自分の休みよりもお客様の都合を優先します。

こんなことを「当たり前」と思っておりましたが、ピーター・ドラッカーのミッション・マネジメントを学ぶ研修の場で、他のお会社の状況をお聞きし、「どうやら、うちは普通じゃないんだ」ということが分かりました。

有井社長それで、私は思いました、わが社の誇るべき財産はここにあったんだ、と。

誰かに教わったわけではないし、強制されたわけでもない。お客様から言われたら「はい」と応じて執行するのが「当たり前」。

我々のお客様に対する心構えは、どうも、普通の会社とは違うものを持っているらしい、これを発展させていけば、当日訪問なども可能になるのではないか、と思ったのです。

空調機メーカーのサービス会社は、何万件もの対応を強いられていますから、当然、ハイシーズンになると、今日の今日、なんていう対応は絶対にできない。早くても三日後、などというケースも出てきます。私たちの場合は、決まった数のお客様への対応となりますので、なんとか対応できるだろうと踏んで、当日訪問という挑戦を始めました。

午後の遅め、例えば、午後5時にお客様から電話がかかってきて「今日来てほしい」と要望されれば、作業終了が遅くなる、退社時間が遅くなってしまうことが分かっていても、うちのメンバーは対応してくれています。 一方で、「そちら様の距離ですと、今から伺うと到着するのが6時頃になり、そのあと作業させていただくと、もしかすると作業完了するのが8時過ぎになるかもしれません。それでも差し支えございませんか?」と確認して、「それなら、明日の朝イチに来てよ」と言われれば、これはお客様のご指示なので、翌日の朝に伺うことになります。そこは臨機応変に対応しています。

空調や給排水設備は、日常の暮らしの中でいつもは意識していないけれど、機能しなくなると途端に不便に感じるものです。ですから、「助かった!」というお言葉をよくいただきます。これがとても嬉しいですね。

『or』で考えない 『and』で考えるなんのためにやるのか?を考え、A or Bではなく、すべてを大切にする

私がミッションとして、「お客様へ貢献する 設備のコンビニエンスカンパニー」という言葉を選んだのは、お役に立ちたい!という想いがあるからです。そして、お役に立った証が「ありがとう」という言葉であったりするのだと思うのです。

有井社長お客様のお役に立ってこそ、私たちは対価をいただけます。お役に立つという言葉には、満足していただくということも必ず含まれます。

利益とか売上は企業だから当然必要なものですが、それとお客様の満足度のどちらを優先するとかという話ではないんですよね。「or」ではなくて「and」だと思うのです。

問題が起きた際、A or B、どちらの対応をとるかと考えてしまいがちですが、そうではなくて、「AもBも視野に入れて考えなきゃだめ。どちらかを優先しようとするのではなくて、両方大事なんだ」と言いたいのです。

「当社がミッションマネジメントに取り組むのも、儲かる儲からないの話しではないんだ。当然、我々は受注活動、営業活動はしなければいけないが、その前に何のためにやるかという自覚をしっかり持たなければならないという話しなんだよ」と。

会社の利益を取るのか、ミッションを取るのかと言われた時期もありました。そういう二者択一の問題ではないんですよね。

仕事って、どちらかと言うと楽しいことよりも、辛いこととかしんどいことの方が多いですよね。だけど、なんで続けていけるかというと「お客様に喜んでいただき、感謝や労いのお言葉を掛けてもらうことがエネルギーになっていくからだよね、だから続けられるんだよね」と言っています。

すごくシンプルでしょ? どちらかを選ぶ必要はないんだ、両方大事、「and」なんだよという考えは。

ただ、どっちを先やるかという判断が必要な場面はありますよね、それはその時その時に、状況に応じて考えればよい話でしょう。

『ありがとう』をカウントする「ありがとう」を実感するような仕事を一緒にしましょう

有井社長「ありがとう」をカウントするということもやっています。

お客様への貢献・お客様のお役に立つ…これを達成しているかどうか、なかなか実感はできません。それで、「ありがとう」の言葉をいただく、これはその一つの証になるよね、数値化すると見えてくることがあるよね、ということです。

そこで、とりあえずどれぐらい「ありがとう」と言われるものなのか、数えてみることにしました。その数字が積み上がってくると、次は「もう少し多くもらおうよ」という姿勢が生まれる。半期毎に集計していますが、ちょっとずつですが増え続けています。

確か、スタートの時は半期で1000回そこそこだったのが、今は2700回くらいまできています、この5年間くらいで。

その間、提供するサービスの内容が著しく変わったとか、そういうことはないんです。経験を積み、一人一人の技術力や言葉遣いなど良くなっている面もありますが、それだけじゃこんなに増えないと思うんです。なぜ増えてきているのかを考えますと、現場でお客様に「ありがとう」をいただくことに対する心構え、これを一人一人が身に付けてきた、ということではないでしょうか。普通の業務上の技術とはちがう、いわば、「ありがとう」をいただくテクニック、とでも言いましょうか。

私は、半年毎に社員のみんなと個人面接を行うのですが、ずいぶんたくさん「ありがとう」をもらっているメンバーに「なんでこんなに『ありがとう』をもらえるの?」と聞いた中で一番びっくりしたのは、「基本的に、『ありがとう』と言っていただくまでは帰らない、というつもりでいます」という答えでした。

修理が済めば「終わりました」と、業務的にはそれだけでもいいわけです。ところが、彼は、自分がやったことを一つ一つ丁寧に説明すると言うのです。例えば、「これがああなっていたからこうしたんですよ」とか、「ここにはこういう苦労がありましたよ」とか。そうするとお客様も「それはどうもありがとうね」と自然に言葉を返してくれます。本人はそこでようやく「これでミッションが完了した」と思えるそうなのです。これには、私も結構衝撃を受けました。こういう思いで「ありがとう」を集めてくれるメンバーもいるんだな、と。

反対に、全然「ありがとう」の数が伸びない人もいます。面接すると「ありがとうなんて普通に言うし、言われるでしょ」と言う。

なので、「本当に君は言われているか? 例えば、そこにあるお砂糖を取ってと言われ、『はい』と取ってあげれば『ありがとう』と言われるよね。でも、取ってやらなかったら、『ありがとう』は言っていただけないんだよ」と。

そういう人たちに、「とにかく、実際に『ありがとう』の数を数えてごらん」と言うと、実は「ありがとう」と言ってもらっていない。「ご苦労さん」と言われて終わったりして、結局、「ありがとう」じゃない言葉が多いんです。そこでようやく、こちらから何にもしないでいたら「ありがとう」は言ってもらえないんだということが納得でき、そうすると、次から、お客様に接する気持ちが違ってくるんですね。 「工事の打ち合わせに伺いました。よろしくお願いします!」「じゃあよろしくね」で終わるところを、「工事をご依頼いただきましてありがとうございました。当日は何時何分にお邪魔しますので、また是非宜しくお願いします」と言えば、先方も「ありがとうございます」と、なりますよね。
こちらから変わってごらん、すると、お客様のお言葉も変わってくるから、ということです。

社員個人面接はおもしろいですよ、一人一人に「ありがとう」どうだったの? とか、「今回、ありがとうの数字が少なかったけど、なんで?」とか、逆に伸びた場合はその要因を丁寧に聞く。「これこれこういうことをして、たくさん、お客さんを回れたんで…」「なるほどね~」って感じで。

就活をされている学生さんにも、この「ありがとう」の話はよくします。 「働いている実感、お客様に自分が役に立ったという実感は、お客様から「ありがとう」のお言葉をいただけた時に一番感じられます。そんな「『ありがとう』を実感するような仕事を一緒にしましょう!」と言うと、多くの学生さんは激しく同意してくださいます。

お客様との繋がりが『ご縁』を広げていくお客様のご商売がきちんとうまくいくように、お仕えするのが私たちの仕事

有井社長当社のお客様の大部分は法人のお客様です。私たちは「メンテナンスで日頃お客様と繋がっていたい」という想いがありますから、下請けではなく、直接取引させていただいているケースが多いです。新しいお客様との出会いのほとんどは「ご紹介」です。ご紹介いただいたら、まずはサービス対応をお試しいただき、そして、リピートしてくださればと思っております。

具体的に言うと、神奈川県内の自動車ディーラーさんからはたくさん仕事をいただいております。例えば、ショールームのエアコンがダウンしたら、ご商売に直接影響してしまいます。自動車は高額商品ですから、購入を検討しようと来店された方や契約にこられた方に「何だ、暑いなこの店は」と言わせてしまうと非常にマズイわけです。そういうことのないように、我々のお客様のご商売がきちんとうまくいくように、お仕えするのが私たちの仕事だと思っています。ですから、何かあった時にすぐに対応しなければいけないし、そこでお役に立てなかったら、いつ役に立つの? というつもりで臨んでいます。

また、当社は休みなく365日対応しており、その上、当日訪問を実践していますが、24時間営業とは謳っていません。

実際は、お客様のご要望があれば工事でもメンテナンスでも対応しています。例えば飲食店さんなどでは「閉店後の午前1時から開店前の朝10時までに工事を終わらせてほしい」といったご要望もありますが、そういったものには対応しています。

人の『期待』に応えたい潔く、筋を通すことが何よりも大切

有井社長人の期待に応えたいというのは、すごく昔から思っていました。子供の頃は特におばあちゃんに褒められたい、と思っていましたね。
例えば、学校のテストでいい点数を取れば褒められる、通知表の成績が良いと褒められる。また、お風呂の掃除をする、庭の芝刈りをする、草むしりをするなどの家のお手伝いしたら褒められる。それでお小遣いももらえたし(笑)。

ですから、学級委員に推薦されたりすると、「えーっ!」と思うんだけど、でも決まった以上は責任をきちんと果たそう、そういう考え方はありますね。だから約束を守る・守らないでもめたり、反故にするということは許せなかったりします。

やりきらないと自分がいやなんですよね。

まぁ、自分にプレッシャーをかけて「だから頑張れ!」という鼓舞もあっただろうし、逃げ道を作っておくようなことを良しとしない、それは潔くない! と思ってしまうたちなんでしょうね。

潔いよいことが必ずしもかっこいいとは限りません。場合によってはかっこ悪いけど、嫌ものは嫌だ! そんな感じですかね。

経営者として重いものを背負う…確かにその自覚はあります。でも、どちらかというと、重いものを背負わされているというよりは、大事な仕事を任されているという「やりがい」の気持ちの方が断然大きいです。この仕事やらせていただいて本当に有り難いと思っています。

どこかのセミナーで「天国体質」という言葉を教わりまして、その話、「結構自分はそうなんじゃないかな」って思いました。嫌なことって忘れちゃう体質なんですよ。

忘れること、自分でもいい加減だなぁと思うこともありますが、嫌なことは過去のこととして、いつまでも怨念を抱き続けることは、ないですね。だから嫌なことはあまり影響しないタイプです。凹むことはありますが、いつの間にか立ち直って、「そんなこともあったね~」と。 でも、筋が通らないことは嫌です。

ちゃんとした『大人』になる秘書技能検定を活かして、人としてのマナー・エチケット、そして心構えを磨く

ちゃんとした大人になりたいなって思うんです。

有井社長例えば、言葉遣い…敬語・丁寧語・尊敬語・謙譲語を間違えないで使えること。人前で普通にお話するようにスピーチができること。マナーやエチケットなど、常識といわれることをきちんとわきまえていること。だらしない服装や髪型はいやですね。立ち居振る舞いというのもスマートでありたいですね。

ある時、秘書技能検定を今度受験するという人から、過去の問題を見せてもらったことがありました。その内容を読んだら、「これって、社会人ならみんな知ってなきゃいけないことじゃん!」と思いました。

当社も昔からビシネスマナー研修とか、そういうところが出来ていなくて、常々なんとかしなくちゃならないと感じていましたから、みんなで秘書検に取り組んでみるのもいいのではないかと思ったのです。

ビジネスマナー研修

そこでまたひらめきました。これは、他社との差別化、当社の大きな特徴となる、と。設備工事業で「社員みんなが秘書検を取得しています!」などという会社はないぞ、と。自分の勉強にもなるから率先して受験したところ、みんなも、私に続いて受験してくれました。

本来知っておくべきこと、そして、それを体現するには、まずベーシックの部分はちゃんと押さえておこうぜ!っていうのが、秘書検に対する取り組みです。

私自身は、2級と3級、同じ日に試験を受けました。両方を平行して勉強したからわかったのですが、実を言うと、2級と3級、テキストの内容はほとんど変わらないのです。なのに、なぜ、2級の方が取得するのが難しいのか。

3級は「知識」なんですよね。「知っていますか?」「分かっていますか?」ということです。 2級のほうは「心得」が問われているんです。知識があることは前提として、こういう時、あなたはどうしますか? と問われる。上司に仕える者として、上司が何をしてほしいかを分かってないといけない。出すぎてもいけないし、頼りなくてもいけない…つまり、「心構え」を問われているのが2級なんだな、と思いました。

商売柄、私たちはお客様を一対一で接客するということはほとんどありませんが、例えば、挨拶状を書く場合などには、その時の勉強がとても役に立ちます。

また、ご紹介いただいたお会社に初めてご挨拶に伺う際は、大抵、先方の社長様・総務部長様といった方にお会いするのですが、会社の取組み等のお話をさせていただきながら秘書技能検定のことをお話しますと、ほとんどの場合「へぇ~!」って驚かれたり、感心されたりします。先方の社長が「うちもやろうか」とおっしゃり、私が「絶対やられたらいいですよ~」とお返しするなど、話題としてすごく盛り上がります。

ミーティング

おかげさまで、電話の応対を褒めていただくことが増えまして、それは本当に嬉しいです。「みんな本当に気持ちいい対応をされますね」と社員を褒められたりすると、やっていてよかったな、とつくづく思いますね。

やはり、ものごとは取り組んでいけば、必ず成果が表れるものですよね。

現に、秘書検をやる前と現在では社員の振る舞いが違います。

昔は今のように身嗜みチェックなど、やっていませんでしたからね。今は、朝のミーティングの時に身嗜みチェックを行い、ユニフォームがきれいでなかったら着替えてもらいます。現場に行くと、結局は汚れてしまうのですが、それでも一日のスタートはきれいなユニフォームで仕事先に向かわなければならないでしょう。靴が傷んでしまっていたら、新品に履き直させます。

打ち合わせ

あと、更衣室の横の流しにはヘアドライヤーを備えてあります。寝ぐせのついたまま出社してきたメンバーにヘアスタイルを整えさせるためです。寝ぐせはマナー違反だぞ、ということです。 近々、アイロンとアイロン台を買って更衣室に置く予定です。わが社には「身嗜み委員会」というのがあるんですが、現在、委員会で取り組んでいるのがユニフォームのパンツの「プレス」です。なかなかパンツにアイロンをかけるまでは手がまわらないようで、プレスをきかせているメンバーは少数派なんですね。独身者は、ほとんどパンツにアイロンがけをする習慣がないようですし、アイロンを所有しているのかどうかも分かりません。じゃあ会社で用意しておいて、あまりに見苦しいようであれば、会社でアイロンがけをしてもらおう、ということです。

企業が存在するには、絶対に『ミッション』が必要ミッション・マネジメントとの出会い

私は、2002年の10月に社長に就任しました。

オフィス風景

かなり急なバトンタッチでした。社長に就任したはいいけれど、それまで一社員として一係員としてお仕事をしておりましたので、いざ社長となっても実質的に何をすべきなのか、まるでわかりませんでした。 まずは数字を理解出来るようになろうと思い、建設業経理事務士の資格取得の勉強を始めました。また、あっちこっちのセミナーや新規事業の説明会などにも参加してみたりしたのですが、「なんか違うな」っていう思いばかりして、肝心の経営という部分が見えなかったんです。

そういった時間を経て、2004年の4月に、後継者を対象とした「経営講座」に参加し、そこでドラッカーマネジメントと出会いました。この経営講座では、とても大切なことを学びました。

最も大きな学びが「ミッション」に関すること。

「企業を経営するには、いやその前に企業が存在するには、ミッションが必要である」という内容の話を聴き、その時「そうだ!」と心にズパン!ときたんです。

有井社長

「よし、ミッション・マネジメントをやろう!」と決め、そこから「じゃあ、我々のミッションはなんなんだ?」ということを考え始めました。

なかなか見つからなかったですよ。6、7カ月の間、たくさん書きました、いろいろな言葉を。なかなか「これだ!」っていうのが見つからなかったんです。そして、年末位にようやくまとまって、翌年の2005年の1月に社内にリリースできました。

で、私が「これだ!」って思えたのが「コンビニエンス・カンパニー」でした。

「コンビニエンス・カンパニー」という言葉にこめられた思いは、お客様へ貢献する、お役に立つ、便利な存在としてお客様にお仕えする、ということ。で、便利って何かというと、「すぐに」「きちんと」ですよね。

便利な存在としてお仕えするということを日本語的に表現するしっくりくる言葉がなかったので、コンビニエンス・ストアじゃないけど、コンビニエンス・カンパニーでどうかな、と。英語的に正しくは「コンビニエント」なんでしょうが、我々が慣れ親しんでいる日本語英語でいいだろうということにしました。

正確には「お客様へ貢献する 設備のコンビニエンス・カンパニー」ですが、業務内容がもっと横に広がっていっていったら、「設備」を取っちゃってもいいと思っています。

ビジネススピリットカード

2005年1月に「コンビニエンス・カンパニー」を表明したわけですが、ミッションをリリースするにあたって新たに始めたのが「社長のメルマガ」です。社長が社員に向けてメールマガジンを発行し、社長の考えや想いを伝えていく、というやり方をその経営講座で聴きまして、「おお、これも是非やってみよう!」と思っておりました。そして、メルマガの第一号のタイトルが「我々のミッション」でした。

メルマガでのミッションを発信…反響・反応はさまざまでしたね。「すごいですね」と言うメンバーもいれば、「また何を始めるんですか?」と否定的な意見のメンバーもいました。これはある程度、予想してたんですよ。いきなり新しい事を始めるのですから、100%の理解や賛同は得られないし、絶対に反発する人も出てくるだろうな、と。でも、私自身がやるって決めたので、「ミッション・マネジメント、やります!あなたたちにはこれに乗ってもらう他はないんだ!」という強い意志を貫こうという気持ちでいました。

素直に受け入れられない性格の人、まず反発する人、まずNoから入る人って、やっぱりいますよね。さらに言うと、「もっと気楽に働きたいのに、こんなこと言われるのは嫌だ」という思いを持っちゃう人もいます。結果的には、会社のメンバーに本当に理解してもらい、浸透するまでの間に辞めていかれる方もいました。逆にいえば、現在働いていただいているメンバーは、理解と共感をいただいている方々、と言えます。

当時の中途採用では、「うちの会社はこういうことをミッションに掲げています。これは2005年から取り組んでいます。実際は、まだまだ出来ていない部分もありますが、必ずここを目指してやっていきます」と話していました。すると、「是非一緒にやりたい!」、あるいは「私もコンビニエンス・カンパニーを目指したい!」と言ってくださる方たちを採用できるようになってきたんですね。

新卒採用に関しても2008年から活動を開始しましたが、学生さんに対しても「わが社はミッション・マネジメントで経営しています。当社のミッションは~で、具体的には~~に取り組んでいます。このミッションや理念に共感・賛同をいただかなければ、当社に入ってくださる意味はないし、私たちもそういう方と一緒に仕事をしようとは思いません」と、会社説明会ではっきり申し上げています。

ミッションのリリース後、辞めていかれた方もいました。ミッションを受け入れてくれた方は残ってくださいました。そして、ある時から以降は、完全にミッションに共感した上で入社してくれるようになり、今があります。

あいさつ

毎朝、始業開始時に「挨拶練習」を行っています。2003年頃、突然これを始めた時、みんな「キョトン」としていましたね。「何が始まるの?」 と。批判する人は批判しましたよ、「こんな軍隊みたいなことやらせて」と。だけど「挨拶練習」には三つの目的があるんです。

一つは時間のけじめです。

現在9時始業ですが、かつては8時半始業でした。当時は、8時半になってもスポーツ新聞を読んでいる人もいれば、外で煙草吸ってる人もおり、時間のけじめがなかったんですね。だから「今から仕事時間ですよ!」というけじめをつけたかった。

二つ目はきちんとしたお辞儀ができるようになること。

きちんとしたお辞儀って、案外、出来ていないものですよ。いくら「挨拶練習」の時に出来たって、実際にお客様がみえた時、お客様のところに伺った時に出来なきゃだめ。それには本当に身体で覚えるしかないのです。

そして、三つ目は「朝のスイッチ入れ!」

朝一番で大きな声を出そう!自分にスイッチ入れよう!ということです。 朝の「挨拶練習」はどういう意味があるのか、これには三つの目的があるんだよ、それを理解してやらなくては意味がないんだよ…そんなことをメルマガに書いてメンバーに送っています。

『真摯』であること人として、真摯に、まじめに、社員のみんなと一緒に成長していきたい

私自身が大切にしていること…言葉としては、「真摯」です。

「礼節を守り、真摯であることに努める」と、経営理念の二番目に掲げています。

まじめであること。当たり前ですよね。大人・社会人の大前提ですよね。

有井社長

几帳面であることに越したことはないが、それ以上に、まじめじゃなかったら何事も勤まらない。普通、本来は誰でも真面目ですよね。ただ、その「まじめを意識していく」ことが、案外、大事かなって思うのです。 これらは、どちらかというと自分の行動規範と、自分を律するためのものなんですけれどね。

この頃、食事のマナーについて、思うことがあるんです。 和食についてですが、年齢に関係なく作法を無視している方が増えています。長年、お箸を使って食事をしてきても、作法を知っていなければ出来ない。お箸や器の取り扱い方・マナーは知らないと出来ないですよね。だから、今、うちも社員教育として和食のテーブルマナーをきちんと教わることができるところを探しているんですよ。和食、なかでも懐石料理のいただき方を学びたいですね。

食事のマナーは一例ですが、こうしたことでも、メンバーと一緒に成長していきたいんですよ。「ほんと、そうですよね~、マナーは大事、一緒に勉強したいですね」と言ってくれる人と会社をつくっていきたいんですね。反対に「テーブルマナーなんかいいよ」って言われたら、「君は好きな人生を歩みなさい」っていう感じです(笑)。

厳しさを乗り越えた先にある『達成感』と『解放感』偶然ではなく、自ら意図して結果を出すことが大きな成長につながる

当社の仕事における象徴的な厳しさは、二つあります。

現場風景

一つは体力的な厳しさ。例えば空調の場合、現場は暑いところか寒いところ。冷房の修理であれば建物の屋上とかで灼熱にあおられながら仕事をする。暖房が壊れた時は寒風吹きすさぶところでの仕事になる。緊急的な修理の仕事は真夏真冬が多いし、また、工事現場っていうのはオールシーズンですので、夏は暑いし、冬は寒い。そういった体力面での大変さっていうのが間違いなくあります。

もう一つは、精神的なものがあります。わが社は民間の企業のお客様と直接お取引させていただいております。ですから、寄せられるご期待とかご要望がダイレクトなんですね。ご評価もダイレクトにいただけるというメリットはあるんですが、実はダイレクトであるっていうことは、それだけ緊張感も大きいということです。

また、工事現場では私たちだけではなく他社の方と共に仕事をしていきます。様々なプレッシャーの中で、現場責任者として決まった工期の中でうまく現場を取り仕切っていくということは大変なことなんです。

作業現場

その代り、完成したあかつきの「達成感」とか「解放感」というのは、格別なものがあります。竣工の際にお客様からいただく労いのお言葉、ご期待を上回った時のお喜びの様子など、これは本当に嬉しいですよ。

期待を上回るということに関して言うと、これこそ、チャレンジングな部分だと思うんですね。ですから、できれば、偶然の産物ではなくて意図した結果であってほしい。狙ってやって、その結果がお客様の評価に繋がってほしい。 「これをやったら喜んでいただけるだろうな」ということが大事なんです。そこには自らの思考があり、自らの工夫があるわけですから。

社員みんなに『感謝』していることお客様重視の精神、そして健康

社員のみんなはお客様重視で、お客様を本当に大切にしてくれる。何事もいとわないで、臨んでくれる、そこが本当に素晴らしいです。午後6時に修理依頼があっても、「行ってきまーす」と言って出かけてくれます。

労をいとわない、これは先代の時代から脈々と続いてきたものです。

もう一つは、みんなが健康であること。それが有り難い。
体力的にも、精神的にも厳しい環境のもとで仕事をしてもらっているのに、みんな病気せずに元気に働いてくれています。本当にありがたいです。

健康セミナー

毎年10月1日から7日まで「全国労働衛生週間」が展開されます。9月は準備月間です。その準備月間~本週間の期間で健康・衛生に関する啓蒙活動として何かやろう!ということで、社員だけではなく、社員のご家族、お取引先を対象とした健康セミナーというのを会社として、毎年、開催しています。少しはみんなの意識が向上してくれていればよいのですが。

また、毎年、インフルエンザの予防接種を会社全員で受けているんですけれど、この秋からは、同居の家族もOKということにしました。経費で精算してもらっていいよ、と。以前、メンバーから「ウチのかみさんが『会社で予防接種を受けさせてくれるなんて、いい会社だね』って言ってましたよ」いう話を聞いたことがありました、じゃあもっと奥さんたちを味方につけようと(笑)。

社員のみんなが健康でいてくれて、病欠がないから、今、仕事がまわっているんです。ほんとうに、有り難いことです。

『いい会社』を創りたい一歩踏み出せば、必ず違った景色が見えてくる

いい会社を創りたい。

有井社長

いい会社とは、ミッションのもとに、ミッションに共感して、その実現を目指す仲間と一緒に仕事をする会社。その中で、嬉しいこと、悲しいこと、そういったものも共有していきたい。そして、その先にあるのが、メンバーのお子さんから「お父さん・お母さんの会社に私も僕も入りたい」と言ってもらえるようになることなのかなって思います。

また、同時に、働いてもらっているメンバーの皆さんに、「この会社でよかったな」って言われたいです。 もちろん、お客様からも「この会社を選んでよかった」と言われたい。

目指しているのはそこです。そのために日々を積み重ねて、出来ないことは一つずつ出来るようになっていきたいですね。

ヨコレイのミッション新卒採用も、以前は「いつかやれればいいな」と思っていました。結構、逡巡していました。でも、実際に一歩踏み出してみたら、そんなにハードルが高いことはありませんでした。今、思うと、なぜあんなに迷っていたのか、と。始める前は「ウチなんかがどうやって学生さんを見つけるの?」と、ネガティブなことを考えてしまうんですね。

なんでもそうですよね。一歩踏み出そうと決めたら、実行あるのみ。一歩足を進めさせれば、必ず違った景色が見えてくる、物事の見え方が違ってくる。

選ばれるための差別化要因って、意図的でなければダメだと思うんです。

「当社の社員はお客様に対するマインドがすごいんです」とお客様にアピールしたところで、「マインド」って、伝え難いですよね。「うちの会社はお客様のご指示があれば、たとえ夜の11時でも打ち合わせ・調査に伺います」と言っても、「今の時代、そんなことは当たり前でしょ」ととらえられてしまう可能性もあります。

もっと具体的なこと、例えば、当日訪問率100%とか、24時間以内の機能回復率98.3%とか、管工事施工管理技士の国家資格を社員の73%が取得しているとか。当社の場合、秘書検もアピール度が高い。社員全員が、全員っていうと語弊がありますが「65歳以下の社員全員が秘書検定を取得している設備工事会社って、世界でも(多分)うちだけでしょう」、これは効きます(笑)

お客様に対しても、メンバーに対しても、学生さんに対しても、他社と差別化していることを、きちんと意識し、言えることが大事なんだと思います。

自分を『律する』自分でしか自分を前に進められない

社員一同

社会人、大人として身に付けるべきものが身に付いている、それは資格であったり礼節であったりしますが、当社で共に働いていただくことで間違いなくプラスになると思います。

規律ある人生っていうか、行き当たりばったりではないと言うか、そういうものは我が社から感じていただけるんじゃないかなって思います。

例えば、お子さんが進学するのに、二つの学校から選択するとして、一つは「三年間お預けいただいたら、きちんと教育としつけをしてお返しします」という学校と、「校風はいたって自由です、制服もありません、自由であるゆえに三年後の姿はお子さん自身の責任になります」という学校と、どちらに行かせますか?と問われれば、大切な子どもを預ける親御さんはきちんとやってくれる前者を選ぶ方が多いと思うのです。会社もそれと同じではないかと。

そこで大事なことは、自分を律するってことですね。そこを忘れないでほしい。

結局、変えられるのは自分と未来。変えられないのは他人と過去。

変えられるのは自分自身でしかないんですよ。だから自分を律することが大事。足りないなと思えば足りるように努力しなければいけないし、曲がっているなと思ったら自分でまっすぐに直さないといけない。変えられるのは自分だけ。周りの人は、伝えてあげることは出来ても、その人を変えることは出来ません。変わるのは自分なんだから、自分を律するということが絶対的に大事です。

自分を律するってことは、自分が「前に進まなきゃいけない」ということ。「後戻り」じゃない。社会人としての成長だとか、大人としてどうなんだって話に繋がっていくんですけれど、やっぱり自分でしか自分を前に進められないんですよね。

笑顔や素直さ、気配りを大切にするメンバーたちと「すぐに」「きちんと」を基本に、「もうそれは当たり前だよ」と言える発想と行動を積み重ねてきた成果・実績・財産が当社にはたくさんあります。 そんなメンバーたちを私は誇りに思います。 これからも、自らを律し、そういう人が集まっている会社にならなければいけないと思います。